やなせたかし夫婦をモデルにした朝ドラ「あんぱん」。
あんぱん第14週「幸福よ、どこにいる」では、嵩が廃品回収の中から「HOPE」という名前のアメリカ雑誌を手にするシーンが描かれます。
その雑誌を見て久しぶりに心が躍る嵩ですが・・・
この「HOPE」という本は実在したものなのでしょうか?
実は、このエピソードは、やなせたかしさんの史実に基づいています。
そこで今回は、
- 「HOPE」というアメリカ雑誌は実在した?モデルはある?
- やなせたかしがアメリカの雑誌から受けた影響・史実とは?
について詳しく解説していきます!
【あんぱん】アメリカの雑誌「HOPE(ホープ)」は実在した?

1940年代、「HOPE」という名前のアメリカ雑誌の存在は確認できていません。
ドラマのために作られた架空の雑誌である可能性が高いです。
朝ドラ「あんぱん」で嵩たちが廃品回収を始めるのは、1946年1月頃です。
その頃に発行されていたアメリカの雑誌の史実について調査したところ、「HOPE」というタイトルの雑誌が存在した事実は見つかりませんでした。
そのため、朝ドラ「あんぱん」に登場する「HOPE」という雑誌は、架空のものである可能性が高いと言えます。
1940年代に有名だったアメリカの雑誌には、
- Life(写真ジャーナリズム誌)
- Time(ニュース週刊誌)
- Yank(軍事専門誌)
- View(アート・文学雑誌)
などがありました。
このように「1単語」のタイトルが主流だったため、当時のアメリカ雑誌っぽい名前として「HOPE」という雑誌名がつけられたと考えられます。
やなせたかしがアメリカの雑誌から受けた影響や史実とは?

やなせたかし先生は、アメリカ雑誌を見るうちに「自分の中で忘れていたものが疼き出すのを感じた」と語っています。
これが高知新聞社に就職するきっかけとなりました。
詳しく見ていきましょう。
捨てられていたアメリカ雑誌
やなせたかし先生は、朝ドラ「あんぱん」の嵩と同じように、廃品回収で収入を得ていた時期がありました。
実際に、回収したゴミの中には、ときどきアメリカの雑誌が紛れていたそうです。
上質な紙、カラー印刷、おしゃれな写真やイラスト、漫画など・・・
綺麗な雑誌を眺めていると、「美しいものへの憧れ」や「面白いもの」を作ろうと奮闘していた過去の自分が思い出されたそうです。
気に入ったページをコレクション
やなせたかしさんは、そんなアメリカ雑誌の中から気に入ったページを切り取って家に持ち帰っていました。
当時の柳井医院は閉院し、叔父さんや千尋さんが亡くなったこともあり、ガランとしていたそうです。
「広い部屋にいると寂しくなる」という理由で、やなせたかしさんは使わなくなった風呂場で生活をしていました。
狭い風呂場では、やなせたかしさんは時間を忘れて、集めた雑誌を見入っていたそうです。
つやのある写真のページ、アメリカっぽいイラスト、皮肉のきいた漫画、センスのいい広告。
それらを眺めるうちに、心の中で何かが動き出したのでした。
文化的な仕事がしたい
廃品回収をして三ヶ月ほど経った頃、ちょうど高知新聞社で記者の募集をしていました。
「何でもいいから文化的な仕事がしたい」と思ったやなせたかしさんは、試験を受けてみることに。
当時の倍率がかなり高かったものの、見事に合格。
やなせたかしさんは廃品回収の仕事とはオサラバし、社会部に配属されることになりました。
史実では、ここで初めて小松暢さん(のぶのモデル)という同僚に出会う流れとなります。
廃品回収でアメリカの雑誌に出会うことがなければ・・・
そして高知新聞がタイミングよく記者を募集していなければ、やなせたかしさんと小松暢さんが出会うことはなかったのかもしれません。
やなせたかしさんが廃品回収をした友人や同級生の史実はこちらで詳しく紹介しています。

【あんぱん】アメリカの雑誌「HOPE」のモデルは「LIFE」?

やなせたかしさんの史実では具体的な雑誌名は公表されていませんが、「LIFE」というアメリカ雑誌がモデルである可能性があります。
詳しく見ていきましょう。
1940年代を代表する写真誌
アメリカの雑誌「LIFE」は、1936年に創刊され、特に1940年代に黄金期を迎えた雑誌(週刊誌)です。
アメリカのグラフ雑誌「LIFE」1949年1月17日号に載っているのはPan American World AirlwaysとKLMの広告。 pic.twitter.com/rPmaM2Rl8s
— イリューシン62 (@gamo19171991su) January 4, 2021
出版社は「タイム社」で、最盛期には週に1350万部以上も売り上げました。
ジャンルは総合誌(報道、軍事、日常、芸能、スポーツ)で、写真がメインであり、写真ジャーナリズム雑誌との位置付けです。
テレビが普及する前だったこともあり、一般市民にとっては「世界の窓」となっていました。
デザイン性の高さ
「LIFE」の表紙は人物のアップが多く、タイトルロゴは赤字に白抜きで「LIFE」と印字されていました。
ソ連大好きな私だってアメリカの1930~50年代は興味深い。昔、同じアパートにいた某放送局勤務の人が転居の際にウチにアメリカの戦後間もない時期のフォト雑誌「LIFE」を大量に置いていったけど、英語わからなくても「LIFE」を見るのが楽しかった。 pic.twitter.com/E6SPifVii0
— イリューシン62 (@gamo19171991su) September 22, 2020
内容は、タイポグラフィやグリッド構成により、読みやすく美しいデザインでした。
写真や文字・余白が絶妙なバランスで、現代のグラフィックデザインに影響を与えたとされています。
また、雑誌の中には、印象的な「広告」も掲載されていました。
#雑誌広告の日
— 佐藤いぬこ (@inukosato) November 5, 2023
昭和18年、アメリカの雑誌『LIFE』(1943年8月16日号)よりタオルの広告https://t.co/bvkcX97xRJ pic.twitter.com/miAMbiEP4P
やなせたかしさんは、製薬会社の広告デザイナーとして働いていた時期もありました。
そのため、こういった海外の広告デザインを見て心をときめかせていたかもしれません。
風刺漫画も掲載
また、雑誌の最後には「Comics」というセクションもあり、一コマの風刺漫画が掲載されていたようです。
本格的な漫画は、コミックブック形式のものが主流でしたが、当時は一般誌にも1ページ程度の漫画(ギャグや風刺)が挿入されていました。
やなせたかしさんも、雑誌の漫画を見ていたという記録があることから、「LIFE」もその中の1つであった可能性が高いですね。
軍人の間でも人気
さらに、雑誌「LIFE」は、アメリカ軍の間でも非常に人気があったそうです。
当時、LIFE誌は、アメリカの多くの家庭で購読されていました。
そのため、家族が兵舎に送る荷物の中に同封されることもあったんだとか。
「LIFE」は写真中心で読みやすく、気軽に楽しめる娯楽の1つでもありました。
さらに、表紙に女性や有名人が登場する号は、軍人たちの「憧れ」や「現実逃避」にもつながっていたようです。
SNSでは、「進駐軍が置き土産にLIFEを置いて行った」とエピソードを載せている人もおり、やはり広く読まれていたアメリカ雑誌ということが伺えます。
11月23日はアメリカでフォト雑誌『LIFE』創刊から87年。
— イリューシン62 (@gamo19171991su) November 23, 2023
ウチには進駐軍の置き土産の1946~49年の号がいくつかあり、子どもの頃からキャパやバークホワイトの報道写真を見ていたので、
その後に日本で創刊されたフォト雑誌がのぞき趣味レベルだったことに落胆した。 pic.twitter.com/IcBNNnjHrq
そのため、やなせたかしさんが実際に読んでいた雑誌の中には、「LIFE」もあったことは間違いないでしょう。
ちなみに、雑誌「LIFE」は1972年に週刊誌としての発行を終了。
それ以降は、不定期で月刊誌として発行し、2007年以降はWebサイトのみの運営となっています。
「LIFE」という名前はブランド化されており、コラボしたアパレルなども販売されています。
まとめ
今回は、朝ドラ「あんぱん」に登場したアメリカの雑誌「HOPE(ホープ)」について詳しくご紹介しました。
まとめると、
- 「HOPE」という名前のアメリカ雑誌は実在しない
- 「LIFE」という雑誌がモデルの可能性がある
- やなせたかしさんはアメリカの雑誌に影響されて高知新聞社に入社した
ということになります。
「HOPE(希望)」とはまさに、嵩の新たな将来への光となるのですね。
朝ドラ「あんぱん」では、どのように描かれていくのか楽しみですね!
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