やなせたかし夫婦をモデルにした朝ドラ「あんぱん」が人気ですね。
あんぱん第11週では、柳井嵩(モデル:やなせたかし)が「幹部候補生試験」に挑戦。
しかし、その試験前夜に馬の不寝番を担当していた嵩は、馬と一緒に居眠りしてしまうという失態をおかしてしまうのでした。
実はこのエピソードは、やなせたかしさんの実話に基づいています。
そこで今回は、
- やなせたかしさんが居眠りで試験に遅刻した実話とは?
- やなせたかしさんと馬のエピソードとその後
について詳しくご紹介していきます!
やなせたかしの馬との居眠りは実話!幹部候補生試験に遅刻?

やなせたかしさんが幹部候補生試験の前夜に、馬の不寝番で居眠りしたのは実話に基づいたエピソードです。
詳しくみていきましょう!
幹部候補生試験を勧められる
朝ドラ「あんぱん」の嵩と同じく「小倉連隊」に配属されたやなせたかしさん。
朝ドラ「あんぱん」での嵩は、中隊長に気に入られたことがきっかけで「幹部候補生試験」を受ける流れになります。
一方、やなせたかしさんも、軍での生活に慣れて来た頃に、上官から受験を勧められたそうです。
これは「上司に気に入られた」というよりも、やなせたかしさんのように、「旧制中学」や「実業学校以上」の学歴があれば自然な流れだったようです。
一定以上の学歴がある兵を短期間の訓練で士官や下士官に育てるための制度。軍隊では、入営したときは全員最下級(二等兵)ですが、四ヶ月を経過すると、幹部候補生の試験を受けることができました。学歴があれば受験資格があるので、ほとんどの者が幹部候補生の試験を受けていました。
試験前夜に居眠り
当時、輓馬隊(ばんばたい)の担当となったやなせたかしさんは、毎日のように馬の手入れや世話を任されていました。
この時、馬に噛みつかれたり、蹴られて前歯を折ってしまうハプニングもあったそうです。
そしてある日、病気の馬を隔離する棟の不寝番(ふしんばん)となった際に、”ある失態”をおかしてしまうのでした。
日本軍では、「馬」は多くの部隊で活用されていました。しかし、馬は夜間に病気を発症したり、ストレスで暴れたり、逃げ出したりする可能性も。そこで不寝番は馬の状態を監視し、異常があればすぐに対応することで、馬の健康を維持していたのです。また、馬の盗難防止のためにも警備をしていました。
馬の不寝番に立っていた際、めったに見回りもこないため、やなせたかしさんは「居眠り」をします。
「あんぱん」では、嵩は明日の試験に備えて徹夜をするつもりでしたが、ウトウトしてしまい、うっかり寝てしまうという話になっていました。
一方、やなせたかしさんは「明日の試験のために疲れをとっておこう」と思ったそうです。
つまり、「居眠り」というよりも・・・ほぼ確信犯だったのかもしれません。
しかし、そんな時に限って週番の士官が見回りにきて、やなせたかしさんが居眠りをしていたことが見つかってしまいます。
居眠りが減点となる
朝ドラ「あんぱん」では、嵩は居眠りをして朝になり、試験にも遅刻してしまう様子が描かれます。
一方、やなせたかしさんは試験には遅れることはなかったようですが、「居眠り」が減点対象となってしまったそうです。
試験の翌日、やなせたかしさんは中隊長に呼び出され、
君は試験の成績では甲幹に合格だが、居眠りをしたのでひとつ下げて乙幹だ
と告げられています。
幹部候補生は、「甲種」と「乙種」に分かれており、教育期間を経て、甲種幹部候補生=甲幹は士官(少尉→中尉→大尉)に。乙種幹部候補生=乙幹は下士官(伍長→軍曹→曹長)に進みます。最終的にやなせたかしさんは「軍曹」になりました。
居眠りが功を奏す
しかし、この「甲幹になれなかった」ことは、やなせたかしさんの命を助けることになります。
実は、「甲幹」に合格して士官になったやなせたかしさんの同期は、その後戦いの前線に送られ、多くの方が亡くなっているのです。
生き残ったとしても、その後、シベリアに抑留された人々もいたそうです。
つまり、やなせたかしさんが、あの時に居眠りをして減点されていなければ、その同期と同じ運命を辿っていた可能性が高いということ。
その後の活躍も、アンパンマンの誕生もなかったのかもしれないと思うと・・・
決して「失態」や「恥」という言葉だけでは片付けられませんね。
やなせたかしさんが馬の作品を多く残すきっかけに!

馬の世話係をしていたこともあり、やなせたかしさんは”馬好き”となりました。
その後、やなせたかしさんは「馬」を題材にした多くの作品を残しています。
詳しく見ていきましょう。
馬の作品を集めた展示会も
やなせたかしさんは生前、「馬」をモチーフにした作品やイラストを多く描き残しています!
それはやはり、軍隊時代に馬を好きになったことがきっかけだったようです。
馬に前歯を折られるという経験もしているやなせたかしさんですが・・・
それ以上に、馬に対する愛は深かったのですね。
日出生台演習場で馬に乗る
— アウストラロピテクスうどん (@zero21ta152h1) February 6, 2021
やなせたかし pic.twitter.com/NDmtA3q19C
もしかしたら、馬の近くで居眠りしてしまったエピソードからも、「馬が命の恩人」だと感じていたのかもしれません。
2022年には、そんな馬関連の作品たちを集めた「馬とメルヘンやなせたかしの世界」という展示会も開催されました。
4/23より春季特別展「馬とメルヘン やなせたかしの世界」が始まりました。アンパンマンの作者であるやなせたかしさんが描いた、絵本『しろいうま』や雑誌『詩とメルヘン』『いちごえほん』の表紙絵の原画など、約60点をご紹介しています✨https://t.co/7o5E6cfNmI pic.twitter.com/3QzwTPgBcW
— 馬の博物館【公式】休館中 (@hanimakun) April 30, 2022
代表作「しろいうま」
そんな「馬関連」の代表作として有名なのは、「しろいうま」という絵本です。
文と絵をやなせたかしさんが担当し、1978年に初版が発売されています。
「しろいうま」のあらすじは以下のとおりです。
ある夜、ぼくの部屋に飾られた一枚の絵から、白い馬が飛び出した。
絵本ナビ「しろい うま」より
馬が駆けた後は、雪が溶け、花が咲き、春が訪れる。
ぼくは星の線路を走る雲に乗って、馬を追いかけ…。
不思議な体験を美しい絵とともに描きます。
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よろこびとかなしみ、絶望とそのとなりにある希望を
やさしく描いた名作の数々。
子どもたちへ、そしてかつて子どもだった
すべての人びとへ贈る、絵本シリーズです。
この絵本は、「白い馬が駆け抜けたあとに春が訪れる」という心が温まる優しい物語です。
やなせたかしさんにとっての馬とは、「希望」や「平和」の象徴だったのですね。
まとめ
今回は、やなせたかしさんの試験前夜の居眠りの実話と、馬とのエピソードやその後の作品について詳しくご紹介しました。
やなせたかしさんといえば「やさしいライオン」のイメージも強いかもしれませんが、馬という動物にも深い思い入れがあったようです。
今後も朝ドラ「あんぱん」 が楽しみですね!
あんぱんの八木信之介(妻夫木聡)の実在モデルはこちらの記事で解説しています。

やなせたかしと井伏鱒二の詩集の史実については知りたい方はこちらの記事もどうぞ。

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