やなせたかし夫婦をモデルにした2025年の朝ドラ「あんぱん」。
この記事では、第13週「サラバ涙」のあらすじ(ネタバレあり)をお届けします。
第13週の内容をざっくり言うと
- 終戦から5ヶ月が経過し、教育現場では教科書の塗りつぶしが行われていた
- 自分の教育が間違っていたことを生徒に誤り、のぶは教師を辞めること決意する
- のぶは次郎の看病に専念するが、次郎の容態は一進一退が続いていた
- ある日、次郎の容態が急変。のぶの手を握りながら帰らぬ人となってしまう
- 中国から柳井家に帰ってきた嵩は、弟の千尋が亡くなった事実を知る
- 福岡に帰ったはずの健太郎が柳井家を訪れ、落ち込んでいた嵩に笑顔が戻る
- のぶは次郎の死から立ち直ることができず、痩せ細り、気力を失っていた
- そんな中、のぶと嵩が4年ぶりに再会し、のぶは苦しい胸のうちを嵩に打ち明ける
- 嵩も自分の戦争経験を通じて「死んだ千尋のためにも、逆転しない正義を見つけたい」と自分の覚悟を伝える
- 嵩は「生きていかなきゃ。次郎さんの分も生きるんだ。」とのぶを励ます
- のぶは次郎が残した速記のメッセージを解読し、その力強い言葉に勇気づけられる
- のぶは再就職のために速記の勉強を始め、会話の書き取り練習のために闇市に出かける
- 闇市で高知新報の記者・東海林にスカウトされたのぶは、入社試験を受けることにする
- 無事に高知新報の記者に採用されたのぶは、新たな人生をスタートさせる
それでは、あんぱん第13週の詳しい内容を見ていきましょう!
あんぱん第13週「サラバ涙」あらすじ
敗戦国の現実
昭和21年1月。
終戦から5か月が経過し、GHQの指示により軍国主義教育からの転換が図られていました。
今まで使っていた教科書のほとんどを墨で塗りつぶすことに。
過酷な食糧難にもなり、「敗戦国」としての厳しい現実を目の当たりにしていました。
朝田家の夕食も質素なもの。
羽多子は、野菜だけの汁を食卓に並べながら申し訳なさそうに詫びました。

これだけしかのうてすみません



やっと戦争が終わったのに、食べもんがないらって・・・
メイコが残念そうにぼやくと、蘭子は淡々とつぶやきました。



やっと戦争が終わってくれて、うちはうれしい。
負けるがやったら、もっと早う終わらせてほしかった
食糧だけでなく、薬も足りていません。
次郎の病状は思わしくなく、のぶは学校を休んで付き添っていました。
次郎との最後の時間
よく晴れた冬の日。
のぶは、次郎が入院している海軍病院の病室にいました。
次郎の肺結核はなかなか回復の兆しが見えず、一進一退が続いています。
のぶは次郎のベッドのそばで、前日に作った煮物が入った弁当箱を開けて見せました。



次郎さんの好きなお芋の煮っころがしです。
すっかりやせ細った次郎でしたが、弁当箱を見た瞬間、顔を輝かせて芋を口に入れました。



うまい!よう芋が手に入ったね
のぶは次郎に隠していたことを打ち明けました。



次郎さん・・・今まで黙っちょってすみません。
うち、教師を辞めたがです
次郎は特段驚いた様子もなく、申し訳なさそうに下を向きました。



やっぱりそうか。
そんな気がしよったがよ・・・すまん、僕のせいで
のぶは自分の苦悩を語りました。



うちは、子どもらあに間違うたことを教えてきました。
日本は必ず勝ちますと・・・男の子には、立派な兵隊さんになって御国のために頑張りなさいと・・・
終戦後の最初の登校日に教壇に立った時、のぶは子どもたちに今まで教えていたことがすべて間違っていたことを謝りました。
まっすぐに自分を見つめる子どもたちの眼差しが、今も脳裏に焼き付いて離れません。



あの子らあの澄んだ目を見たら、何ちゃあ言えんなってしもうて・・・
その時、うちはもう、教壇に立つ資格はないと思うたがです
次郎は優しく微笑みながらのぶを慰めました。



・・・君らしいねえ



政治家らあは『一億総懺悔』らあて言うけんど、間違いを認めて謝った日本人がどればあおるか
次郎は自分も戦争に抗う勇気がなく、波にのまれてしまったと語りました。



やっと終わったがやき、これからの話をせんかえ



次郎さん、いつか話してくれましたね。
戦争が終わったら、色んな国の人らあの写真を撮りたいと



うん・・・でも、今はもっと、大事な夢ができた
次郎は速記で何かを書き始めます。
のぶはその不思議な記号の羅列に興味を示しました。



なんて書いちゅうがですか?



今度教えちゃうき
それが次郎との最後の約束となりました。
次郎の死
数日後に次郎の容態が急変、
のぶは次郎の母・節子と共に大急ぎで病院に駆けつけました。
喀血が止まらず、血圧も下がっています
医師の言葉に、のぶは耳を疑いました。
目の前の次郎は、すでに昏睡状態でした。



次郎さん・・・



のぶさん・・・母さん・・・
次郎は消え入るような声でつぶやくと、混濁する意識の中、のぶをじっと見つめました。
のぶは必死に微笑んでみせましたが、握りしめていた次郎の手から徐々に力が抜けていくのが分かりました。
そして、沈黙が訪れます。
医師は次郎の胸に聴診器を当てると、ゆっくりと首を振りました。
泣き崩れる節子の隣で、のぶは呆然と立ち尽くしました。
家族の優しさ
次郎の初七日が過ぎました。
のぶは釜次たちの前で、畳に手をついて頭を下げます。



次郎さんの葬儀では大変お世話になり、ありがとうございました・・・
釜次はやつれきったのぶの顔を心配そうに覗き込みました。



そんな他人行儀な挨拶はせんでえい!
のぶ、これから、どうするがな・・・



なるべく早う、仕事を探したいと思うちょります



もっぺん教師に戻るがか



・・・教師を続けることは、うちにはもうできません



次郎さんのお母さんもおつらいでしょうき、あんたがしっかり支えてあげんと



みんな、心配せんとって。
うちにできる仕事があったら、何でもするつもりやき・・・
のぶは気丈に振る舞いますが、痩せ細り、まるで生気が感じられません。
そんなのぶに蘭子がそっと近づき、優しく諭しました。



お姉ちゃん・・・
とにかく食べて眠る。
こんな時、そうするしかないがやき



無理してでも食べるがで。
お姉ちゃんが何も食べんで、一人でしょんぼりしよったら、次郎さん、悲しむき



蘭子・・・
堪えていた涙があふれ、のぶは次郎が死んでから初めて泣きました。
せきを切ったように泣きじゃくるのぶを、蘭子は黙って抱きしめました。
嵩の帰還
その頃、柳井家では・・・
しんが玄関で落ち葉を掃いていると、ボロボロに汚れた靴が視界に入りました。



お、奥様!奥様あ!
慌てて出てきた千代子は、目の前の光景に目を疑いました。
そこに立っていたのは嵩でした。



柳井伍長、ただいま帰還しました



嵩さん・・・生きちょったがかえ
千代子は目を潤ませて、嵩を抱きしめました。



伯母さん・・・千尋は?



千尋さんは・・・死んだそね
ずっと前から、嵩にはそんな予感がしていました。
汚れた軍服姿のまま、嵩は縁側に座ります。



戦地で飢えて死にかけた時・・・
夢に父さんが出てきたんです
嵩は、清の手帳を千代子に見せました。



千尋が小倉まで会いに来てくれて、僕にくれたんです



父さん、僕よりずっと優秀な、千尋を守ってくれればよかったのに・・・
生きて帰ってくるの、僕じゃなくて千尋ならよかったのに



嵩さん!
そんなこと言うたら、お父さんや、寛伯父さんに叱られますよ!
千代子が声を震わせながら嵩を叱ると、しんがさめざめと泣き出しました。



うちは、戻りたいがです・・・
皆さんが笑いよった、あの頃に・・・
千尋がいないという悲しい現実を、嵩も受け止めきれずにいました。
ピンぼけの写真
高知市の若松家。
その一室で、のぶがフィルムの現像に挑戦していました。
印画紙に焼き付けると、新婚の頃、次郎が撮ったのぶが次々と浮かび上がります。
そこに写るのぶは、どれも幸せそうな笑顔を見せていました。
一方、のぶが撮った次郎の写真は、ぼやけていました。



ごめんなさい、次郎さん・・・
うちが撮ったき、ピンボケやね
のぶはたくさんの写真に囲まれ、一人で涙を流しました。
4年ぶりの再会
高知大空襲の傷痕が残る焼け野原。
そこを一人で歩いていたのぶは、ある人影を見つけます。



嵩・・・生きちょったが・・・



のぶちゃん・・・
それは、のぶと嵩の4年ぶりの再会でした。



釜次さんから聞いたんだ。
次郎さんのこと・・・



わざわざ、ありがとう
復興に向けて作業をしている人々を見つめながら、のぶは自分の苦悩を嵩に打ち明けます。



・・・うち、教師辞めたが。



あの子らあを戦争に仕向けてしもうたのは、うちや・・・



あの子らあの、あの自由な心を塗りつぶして、あの子らあの大切な家族を死なせて・・・



うち、生きちょってえいがやろうか・・・?
のぶはひざを抱えて泣き崩れました。
嵩はのぶの隣に座ります。



のぶちゃん・・・
死んでいい命など、ひとつもない



うち、どうすればよかったろうか・・・



僕もそればかり考えてたけど・・・
分からない。



この先もずっと、それを自分に問いかけることしかできないんじゃないのかな?



正しい戦争なんてあるわけないんだ。
そんなのまやかしだ。



まやかしの正義のために、敵も味方も、仲間も大勢死んだ・・・千尋も・・・



もし逆転しない正義があるとしたら、僕はそれを見つけたい。
死んだ千尋のために、僕ができること、それしかない気がして・・・



生きていかなきゃ。
みんなの分も、千尋の分も・・・
のぶちゃんも生きるんだ。次郎さんの分も・・・
そこへ、遠くから子どもの声がしました。
ハチキンのお姉ちゃんや!
空襲の時に助けた男の子・なおきが母親と立っていました。
ハチキンのお姉ちゃん、ほいたらね!
その様子を見ていた嵩は、思わずクスッと笑いました。



ハチキンのお姉ちゃん・・・か



うるさいっ
かつての負けん気の強いのぶが顔を出し、二人は笑い合いました。
次郎の夢
その日の夜。
のぶが家に帰ると、机の上に小さな風呂敷包みが置いてありました。
包みを開くと、中には速記の本と節子の置き手紙が入っています。
のぶさん、お留守なので置いていきます。
次郎が使っていた速記の本です。
のぶは速記の本をめくり、病院で次郎が書いていた日記の最後のページを開きました。
のぶは本を頼りに、夢中になって次郎の速記を読み解いていきます。
気づけば、窓の外が白々と明け始めていました。
ようやくすべてが解け、のぶはノートを両手に持って声に出して読んでみました。



”のぶへ”
”自分の目で見極め、自分の足で立ち、全力で走れ!”
”絶望に追いつかれない速さで。”
”それが僕の最後の夢や”
窓から差し込む朝日が、次郎の大きな愛のように、のぶを優しく包み込みます。
のぶはノートを抱きしめながら、心に小さな火が灯ったのを感じました。
速記の猛勉強
その日から、のぶは手作りした五十音表と次郎の本で、速記の猛勉強を始めました。
そんなある日、若松家に羽多子が訪ねてきました。
節子が玄関を開けると、羽多子は驚いて頭を下げました。



急にすみません・・・
あの、のぶはおりますか?



はい。
あの、今ちょっとあれですけんど・・・
どうぞおあがりください
節子は笑いながら、羽多子を家に上げ、のぶのいる部屋をそっと開けて見せました。
ぶつぶつと何かを唱えながら机に向かうのぶを見て、羽多子が首を傾げました。



あの子、何しゆうがでしょうか?



速記の練習です。
次郎が使いよった本を届けたら、寝る間も惜しんで勉強しゅうみたいです



あれ、お母ちゃん!いらっしゃい!
のぶが振り返ると、羽多子は拍子抜けしました。



何しにって、あんたが一人で塞ぎこんじゅうがじゃないかと心配で来てみたら・・・
夕方、羽多子は節子と焼け野原を歩きながら話しました。



昔から、のぶはああながです。
やりたいことが見つかったら、ガーッと猪突猛進で、周りが見えんなってしもう



のぶさんはまだ若いき・・・
若松の家には縛られてほしくないがです
節子は大阪の長男の家に行くことを決めており、のぶに「自由になってほしい」と願っていました。
突然の来客
その日、柳井家に思いがけない客がやってきました。
玄関先に現れたのは、辛島健太郎。



なんで?福岡帰ったんだよね?



帰ったっちゃけど、家、全部燃えて、跡形もなかったっちゃんね
健太郎は家族は無事だったものの、家を失い、家を立て直すために戻ってきたと説明しました。



寂しかったったい!会いたかったとよ
健太郎は強引に嵩を抱きしめました。
千代子は微笑ましく二人を見つめました。



まあ、ゆっくりしていってください。
うちは大歓迎やき



よかった〜!
ここまで来て追い返されたら、路頭に迷っとったとです。



ほんじゃあ柳井くん、早速仕事ば探すばい。
一緒んちかっぱ頑張るったい!
久しぶりに笑った嵩を見て、千代子としんは顔を見合わせて微笑みました。
闇市での出会い
のぶは速記の練習のため、闇市へ。
人混みの中を歩き、客と行商人のやりとりをひっそりと速記で書き記していました。
その近くで、酒を飲み交わす二人の男がいます。
東海林は、闇酒を手に、部下の岩清水に向かって大声で演説していました。



日本中、どこもかしこも、衣食住、何もかもが足らん!
それでもこの国の人らあは、頑張って少しずつ復興しようとしゅう!
その時、速記をするのぶの姿が東海林の目に留まりました。



何をメモしゆうで!君は敵国のスパイか!
東海林はのぶに興味を示し、話しかけました。



ち、違います!
色んな人の話を聞きゆうがです



なんで?



家が焼けてもへこたれず、たくましい人らあの会話を書き取りよったら、うちも励まされるがです
東海林は手招きして、のぶを近くに呼びました。



ほう、速記ができるがか



まだまだ勉強中ながですけんど



素晴らしいねえ。好奇心、探求心、しぶとさ、図々しさ。
新聞記者に必要なものを、すべて持ち合わせちゅうき。



君のような人を我が社は待っちょった!採用!
東海林はのぶに名刺を渡しました。



東海林さん!何、無責任なこと言ゆうがですか



明日、我が社の編集局に来たまえ!待ちゆうきねや!



ちょっと東海林さん!飲みすぎです!行きますよ
酔っ払いの男からのぶが渡された名刺には、『高知新報』と書かれていました。
入社試験
翌朝、高知新報の編集局を訪ねるのぶ。
しかし、東海林は前夜のことを覚えていません。



どちらさま?
のぶは速記の手帳を取り出して、前夜の会話を音読しました。



”君のような人を我が社は待っちょった。採用”



確かにそのとおり、言うてました



俺にそんな権限あるわけないやろ
東海林は、入社試験を受けることをのぶに勧めます。



近々、入社試験があるがや。
受けてみたら?
試験の心構えはできていませんでしたが、今ののぶに失うものは何もありませんでした。
挑戦するだけしてみようと、のぶは入社試験を受けることを決意します。
厳しい面接
新聞社の入社試験は、筆記試験、実地試験、面接の三段階です。
面接では、面接官の一人、霧島がのぶの過去を厳しく追及しました。
あなた、女子師範の学生の頃、弊社の新聞に載りましたね?
記事にはこう書いてある。
朝田のぶさんは『愛国の鑑』である、と
なぜ教師を辞めたがですか?
のぶは誠実にすべてを話しました。



私は、子どもたちに立派な兵隊さんになれと説き、何人もの教え子たちを戦争に仕向けてしまいました



純粋な子どもたちに間違った教育をしました。
ですから、もう二度と教壇に立つ資格はないと思い、辞職しました
軍国主義から民主主義に乗り換えたとでも?
信じられんね



アメリカの民主主義がそんなに素晴らしいものかどうか、私にはまだ分かりません



今度こそ間違えんように、周りに流されず、自分の目で見極め、自分の頭で考え、引っくり返らん確かなものをつかみたいがです
もう結構です
のぶが退室した後、霧島は厳しい表情で名前の欄にペンで横線を引きました。
ただでさえ、うちは進駐軍に目をつけられちゅう。
あんなきれいごと言うても過去は拭えんき
しかし、東海林が立ち上がります。



ちょっと待ってください。
彼女は、今の女性たちの代表だと言うてもえい



みんな彼女のように打ちのめされ、彼女と同じ思いを抱えちゅうがや。
世の中も、俺も、あんたも、変わらんといかんがじゃないですか!責任は俺が持ちます。
東海林の熱意により、のぶの採用が決まりました。



編集部は人手不足で、猫の手も借りたいくらいながや。
猫の手として採用する



たまるかー!
新聞社を出て歩いていると、少しずつ喜びがこみ上げてきました。
足は徐々にスピードを上げていき、のぶは、気づけば風を切って走っていました。
新たな出発
のぶの採用の報告を受けて、朝田家の人々は、あんぐりと口を開けました。



新聞に載るがじゃのうて、新聞の記事書くがか?



このご時世に、仕事が見つかっただけでも立派なもんじゃ・・・でかいた!おめでとう
久しぶりの明るい知らせに、釜次は大喜びしました。
しかし、一人冷静な蘭子が心配を口にしました。



お姉ちゃんが記者・・・・大丈夫?



確かに、なんか要らんことしそうやね
急に皆から心配そうな視線を向けられ、のぶは口を尖らせました。



まあ、何とかなるやろう!
メイコが仕切り直し、皆が声を上げて笑いました。
引っくり返らない確かなものをこの目で探すため・・・
のぶの新しい人生が始まろうとしていました。
〜あんぱん第13週終わり〜
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