やなせたかし夫婦をモデルにした2025年の朝ドラ「あんぱん」。
この記事では、第12週「逆転しない正義」のあらすじ(ネタバレあり)をお届けします。
第12週の内容をざっくり言うと
- 嵩は健太郎と一緒に宣撫班で「紙芝居」を作る任務を任される
- 嵩は父の手帳からヒントを得て「日本と中国は双子」というテーマで紙芝居を作り、それが好評となる
- 岩男は現地の子供・リンに慕われており、日本に残してきた息子のように可愛がっていた
- その後、駐屯地は食糧難となり、嵩たちは極限状態で警備活動に当たっていた
- 空腹で気が狂ってしまった康太が現地住民の家に押し入ってしまうというトラブルも発生
- そんな中、岩男が現地の子供・リンに銃で撃たれ、息を引き取ってしまう
- リンはかつて岩男たちが取り締まったゲリラ民の子供であり、その親の仇を取るために岩男に近づいていたことが判明する
- 岩男もそれを知っていたため「撃ったのはリンじゃない」と最後まで庇い続けた
- 嵩は重度の栄養失調でついに倒れてしまい、そこで亡き父・清の幻想を見る
- ギリギリのところで食料が届き、嵩は助けられて一命を取り留める
- 一方、高知ののぶは病気で下船した次郎と、広島の病院で久しぶりに再会する
- その後、高知市内は空襲を受け、焼け野原となるが、のぶは何とか生き延びる
- ついに終戦を迎え、のぶは高知で、嵩は中国で、玉音放送に静かに耳を傾けていた
それでは、あんぱん第12週の詳しい内容を見ていきましょう!
あんぱん第12週「逆転しない正義」あらすじ
宣撫班への配属
中国へ上陸後。
嵩たちの部隊は治安維持任務となり、戦闘を免れてホッとしていました。
そんな中、嵩は絵の才能を認められ、粕谷軍曹から「宣撫班(せんぶはん)」への配属を命じられます。
占領した地域において日本への敵対心を減らし、地域住民の心を和らげて治安の維持を図る。
宣伝活動(ビラ、ポスター)や文化活動(紙芝居、演劇)などを行うチーム。
※直接的に戦いには参加しないものの重要な役割を担っていた。
宣撫班の事務室に入ると、怪我をした兵たちが手当てを受けている物々しい雰囲気でした。

・・・敵に攻撃されたのですか?



いや・・・今朝、市場でひと騒動あってな。
「桃太郎」を日本兵に見立てた紙芝居を見せていたが、村人たちが騒ぎだした。



我々の任務は、武力によらず、占領地の民心を安定させることにある。
柳井くん、一刻も早く「次の作戦」を考えるのだ。



・・・・作戦、でありますか?



地元民から反感を買わず、老若男女が喜ぶ紙芝居を、お前が作るんだ!
村人たちの怒り
紙芝居作りを命じられた嵩。
今朝、騒動が起きた現場の市場へ向かいました。
舞台には紙芝居の残骸が散乱。
嵩が破れた紙を拾っていると村人たちが集まってきて、嵩を睨みつけました。
用ガスンダラ、トットト帰レ!
ソーダ、ソーダー
護衛兵が小銃を構えましたが、嵩は彼らを制して市場を後にしました。
駐屯地に戻り、兵舎裏で物思いにふける嵩。
そこへ、健太郎が通りかかります。



・・・・・・どこが正義の戦争なんだ。
これのどこが、正義の戦争なんだ!



声がデカかって!
そげんこつ言って、誰かん聞かれよったらヒラん兵隊に格下げされるばい



俺たちが厳しい訓練して、鉄砲担いで海を渡ってきたのは、何のためだ?



東洋平和のため。
米英の侵略から大陸の良民を守るため



散々そうたたき込まれたけど・・・
ここの人たちにとっては、いい迷惑なんじゃないか



増まれても、しよおんなかよ・・・。
俺ん分隊はここん来てから、民家ば接収して回ったとよ。
軍のために、住んどお人たちば追い出して・・・



ごめん。健ちゃんは俺よりずっと嫌な仕事についてるんだな
数日後、嵩が班長に頼み、健太郎も宣撫班に配属されることになりました。
紙芝居のアイデア
健太郎との会話の後、嵩は市場を歩いていると中国人の少年が駆け寄ってきました。



タッスイガー
振り返ると、笑って敬礼している岩男と康太がいました。



岩男くん、康太くん・・・この男の子は?



こいつはリンであります。
この坊主、うちの隊で雑用に使っておりますが・・・
どういうわけか自分になついて始終ついてくるのであります
リンと岩男の微笑ましいやり取りを見て、嵩は変わった岩男に驚きました。



岩男くん・・・変わったね



岩男は入隊前に嫁をもらって、子どもが生まれたそうです



へぇ、お父さんになったのか!



自分が入隊してから生まれたので、まだ会うてませんが、男の子であります



やき、この子が息子のようにかわいいがやろ?



こいつといると、なんだかこのへんが、ふわーっとあったかくなるのであります
岩男の優しい表情を見て、嵩の頭にあるアイデアが浮かびました。
父の手帳
下士官室で、嵩は健太郎と共に紙芝居の制作に取り掛かりました。



そん手帳は?



死んだ父さんの手帳。
新聞記者をしていた父さんが、取材で大陸を回ってた時、日誌を書いてたんだ
手帳には、
東亜の存立と日支友好は双生の関係だ
と記されていました。



・・・・双生の関係?



「日本とこの国は共に歩いていく」ということ



それば紙芝居んすると?



幼なじみが現地の少年と仲良くしてるのを見て、思いついたんだ
二人は徹夜で作業に没頭し、審査に向けて紙芝居を完成させました。
双子の物語
紙芝居の審査当日。
島中隊長、粕谷軍曹、そして八木の前で、嵩と健太郎は緊張の面持ちで紙芝居を披露しました。



昔々、ある島に一人の男が住んでいました。



島の暮らしは厳しく、男は隣の島に食べ物を探しに行くことにしました。
男は船を漕ぎ、やがて、隣の島に到着しました。
その島には、一人の男がいました。男の顔は、人相が分からないほど汚れていました。
二人はやがて喧嘩を始めました。



「お前は誰だ?俺の島に手に入ってくるな!」



「島の人たちが飢えて死にそうなんだ!食べ物をよこせ!」



「渡すものか!この野郎!」



殴り合ううちに、二人は不思議なことに気づきました。



相手を殴ると自分も同じ場所が痛むのです。



ポカリ!
「痛い!」



「痛い!やったな!お返しだ!」



「イタタタタッ!」



「イタタタタッ!」



二人は傷だらけの顔を池で洗い、水面に映る顔を見て驚きました。



「なんだ!お前は俺とそっくりじゃないか!」



「本当にそっくりだ!」



なんと、二人は双子でした。



同じ母親から生まれ、離れ離れに育った双子だったのです。



「もう喧嘩はやめて、共に助け合って生きていかないか」



「そうだな。やっと双子の兄弟に会えたんだ」



二人は初めて微笑み、お互いの島に足りない物を分け与えることにしました。



双子の兄弟と、二つの島の人々は、いつまでも幸せに暮らしました・・・・めでたしめでたし
上官たちの反応は微妙だったものの、八木の一声で何とか合格をもらうことができました。
意外な反応
いよいよ村人たちに紙芝居を披露する日。
舞台の前には大勢の村人が集まり、中国語の通訳が入りながら物語が進みました。



なんと、二人は双子でした。
同じ母親から生まれ、離れ離れに育った双子だったのです
この感動的な場面で、会場はなぜか笑いの渦に包まれました。



ここは泣くところで、笑うはずはないんだけどな・・・
紙芝居は大盛況に終わりましたが、嵩と健太郎は首を傾げていました。
片付けをしていると、八木が現れて真実を明かしました。



通訳がセリフを変えて訳したんだ。
こっちの連中が喜ぶように



やっぱりそうですか。
そんな気がしました



ばってん、泣けるところは泣いてほしかったであります
健太郎は残念がりましたが、嵩は清々しい気持ちでした。



いや、これでよかったよ。
初めはぶつかっても、お互いに歩み寄って仲良くやっていく話だから、一緒に笑えたほうがいいと自分は思う
舞台から見た村人たちの笑顔は本物でした。
話の意図がズレて伝わったにせよ、暴動よりも笑顔のほうが絶対にいいと嵩は確信していました。
食糧難との戦い
嵩の紙芝居は評判となり、宣撫班の絵画制作主任に任命されました。
二人は毎日新作を作っては村人たちに披露していましたが、戦争は悪化の一途を辿っていました。
昭和20年春。
ついに駐屯地も敵の大攻撃を受けて孤立状態へ。
嵩は元の分隊に戻され、戦闘任務に就くことになりました。
補給路は断たれ、食事は朝晩の二食のみ。
若い兵隊たちにとって最もつらい空腹との闘いが始まりました。
極限状態で
朝食時、各々の前に置かれているのは乾パンのみでした。



うまい・・・・
硬いけんど、うまい・・・・
もっと食いたいねや



もしかしたら、あの店で焼いた乾パンだったりしてな・・・
嵩は遥か遠い故郷の朝田パンに思いを馳せました。
駐屯地の状況は日に日に悲惨になり、ついに夕食は乾パン1つだけ。
見回り中、康太は力尽きてその場にしゃがみ込みました。



ダンゴムシか・・・
名前がダンゴだから、食えるかもしれん



腹壊すぞ!



何でもいいから食わせてくれぇ・・・
康太が泣き声で訴える姿に、嵩は何も言えなくなりました。
老婆の優しさ
数日後。
康太は見回り中に民家に押し入り、老婆に食べ物を要求しました。



おい!食い物を出せ!



やめろ!
帝国軍人ともあろうものが!
恥を知れ、恥を!
老婆は静かに首を振り、中国語で答えます。



(食べ物はない、何もない・・・)



ウソだ!ここにあるじゃないか!



(さっき、あんたたちみたいなのが来て、全部食べてったよ)



食い物を出せ・・・食い物をよこせ!
康太は小銃を老婆に向け、もはや別人のようでした。



やめろ!落ち着け、コンタ!



(ちょっと待ってなさい)
老婆は動じることなく、庭に出ていきました。



自分が何してるのか分かってるのか!
嵩が小銃を取り上げると、康太は亡霊のように呟きます。



わしらは、どうせもうすぐ死ぬがじゃ・・・
せめて最後に腹いっぱい食ってから死にてぇ・・・
その後、老婆はザルに真っ白な卵を数個入れて戻ってきました。



(今うちにはこれしかない、生みたての卵だ)
老婆は卵を茹で、三人に差し出しました。



うまい・・・うまい・・・



(あなたも食べなさい)



謝謝(シェイシェイ)・・・
嵩は拝むようにして卵を受け取り、ひと口噛んだ瞬間、涙がこみ上げました。



(・・・・空腹は人を変えてしまう)
老婆の静かな眼差しに、康太は声を上げて泣きました。
岩男とリンの悲劇
その頃、岩男は駐屯地の外で歩哨(ほしょう)に立っていました。
そこへ、リンが走ってやってきます。



イワオさん、イワオさん・・・
ハッケヨイ、しようよ



だめだ。



いいか。もう俺にはつきまとうな。
お前は便衣だと疑われている



ベンイ?



スパイのことだ。敵にこちらの動きが漏れている。
容疑をかけられたら、子どもでも何をされるか分からない。



だから、もう俺には近づくな。



・・・我們不能再見面了嗎?
(もう会えないの?)



そうだ・・・お別れだ。
これまで、ありがとうな・・・



再會啊(さようなら)、イワオさん・・・
その時、リンの顔から笑顔が消え、雑嚢から拳銃を取り出しました。
遠くで銃声が聞こえ、嵩たちが駆けつけると岩男が地面にうずくまっていました。



待て・・・違うんだ。
あの子は・・・関係ありません
その後、岩男は意識を失い、駐屯地に運ばれました。



岩男・・・あの子に撃たれたんだろ?



・・・伍長殿、違います・・・・



ずっと前から、覚悟しちょった・・・・・
嵩、どっかで、あの子に会うたら、伝えてくれ・・・・・



俺は、喜んじゅうと・・・・・



何言ってるんだ



リンはようやった・・・・
これで、えいがや・・・
そう言い残すと、岩男は遠くを見つめながら、ゆっくりを息を引き取りました。
復讐の虚しさ
その後、嵩は岩男との最後の会話を八木に伝えました。
すると、意外な真実が返ってきました。



あの子は親の仇を討ったんだ
1年前、ゲリラ討伐が命ぜられ、リンの住んでいた村が攻撃目標となっていました。



その時、あの子の両親は射殺された。
リンの親父はゲリラだった。



母親はリンをかばい、あの子の体に覆いかぶさって死んだ・・・
母親を撃った日本兵をリンは見たそうだ。



まさか・・・それが、岩男・・・?



親の仇のはずなのに、リンはいつの間にか、あいつを好きになっていたそうだ。



お前は・・・リンが憎いか。
幼なじみの仇をとりたいか?



分かりません



やめておけ。きりがない
八木は壁に貼ってあった標語「占領地良民ヲ己ガ同朋兄弟ト心得愛護善導育成スベシ」を引きはがし、足で踏みつけました。



「卑怯者」は、忘れることができる・・・
だが、卑怯者でない奴は、決して忘れられない。



お前はどっちだ?どっちなんだ!
嵩は何も答えることができませんでした。
父との再会
2週間後。
兵たちの食糧難は限界に達していました。
嵩も極限の飢餓状態で警備していると、ついに倒れ込んでしまいます。
意識が遠のく中、父親の清が現れました。



嵩・・・嵩、大丈夫か?



父さん・・・会いたかったよ、父さん



父さん、千尋はどこにいるんだろう・・・?
僕はもうすぐ餓死すると思うけど、あいつは名誉の戦死をするのかな・・・・・・



こんなバカげた戦争で、大切な息子たちを死なせてたまるか!
こんな惨めでくだらない戦争を始めたのは、人間だ



でも、人間は美しいものを作ることもできる。
人は人を助け、喜ばせることもできる。
お前の紙芝居、あんなにみんなを喜ばせてたじゃないか



・・・でも、僕はこんなに無力だ



いいか、嵩。
お前は父さんの分も生きて・・・
みんなを喜ばせるものを作るんだ・・・



何十年かかっても、諦めずに作るんだ
清は手帳を嵩に手渡し、光の中に消えていきました。
ベッドの上で
嵩が目を覚ますと兵舎の寝台の上で、健太郎が心配そうに覗き込んでいました。



健ちゃん、俺は・・・?



道で倒れとって、通りかかった味方ん兵隊に担ぎ込まれたとよ。重度の栄養失調げな



食べりい。
救援隊が到着したけん、食料も届いたとって
枕元には、父の手帳が置かれていました。
嵩はお粥を味わいながら、不思議な気持ちで手帳を見つめました。
同じ頃。
高知ののぶのもとに、次郎から半年ぶりの便りが届きました。
次郎は病気で下船し、呉の海軍病院に入院していたのです。



次郎さん!よかった、お元気そうで



ごめん。実は大したことないがや。
葉書には少し大げさに書いてしもうた。
君が大急ぎで来てくれると思うて・・・



今はお体を治すことだけ考えてください。
うちは、次郎さんにこうして会えただけで、うれしいがです



僕もやき。
君の笑顔が、また見られるとは思わんかった



・・・笑うてくれんかえ?



はい・・・
元気そうに振る舞う次郎に、のぶは一生懸命笑顔を作ります。
次郎の病名は肺浸潤(初期の肺結核)と呼ばれるものでした。
高知大空襲
7月4日午前2時。
高知市内に空襲警報が鳴り響きました。
のぶは次郎のカメラを持って家を飛び出します。
逃げ惑う人々と同じ方向に走っていると、子どもの泣き声が聞こえました。
助けて!!怖いちやー!
のぶは逆方向へ駆け出し、家族とはぐれた少年を見つけました。
焼夷弾が落ちる中、のぶは少年に覆いかぶさって守りました。



ハチキンがついちゅうき大丈夫や。行くで!
高知が空襲を受けた知らせを受けて、羽多子たちは市内に駆けつけました。
焼け野原となった町でのぶの姿を捜します。



のぶー!



のぶ姉ちゃーん!



お姉ちゃん・・・お姉ちゃん!
そこへ、泥だらけののぶが少年と共に現れました。



どういて・・・?
お母ちゃんらあ、なんでここにおるが?



よかった・・・よかった・・・無事で・・・



お母ちゃん・・・
その後、少年の家族も見つかり、のぶはほっと安堵しました。
気が抜けた瞬間、やっと焼け野原になった町の現実が目の前に迫ってきます。
のぶは次郎のカメラで、変わり果てた町を写真に残しました。
1945年7月4日未明、第二次世界大戦末期の高知市は、米軍からの大規模な空襲に見舞われました。この空襲で、死者400人以上、罹災者約4万人という甚大な被害が出ました。高知市街地の約48%が焼失し、11,804戸の家屋が全焼・全壊。高知城の一部や坂本龍馬の生家なども失われ、市街地は焦土と化しました。
終戦の瞬間
高知大空襲から約1ヶ月後。
のぶは焼け残った若松家で一人、玉音放送を聞きました。



・・・・・。
その悲しい事実に、日本中が沈黙に包まれた瞬間でした。
同じ玉音放送を、中国・福建省の駐屯地にいる兵たちも整列して聞いていました。
周囲からすすり泣く声が聞こえる中、嵩はゆっくりと目を閉じます。



・・・・・。
目を閉じると、心に浮かぶのは、岩男とリンが笑い合っている姿でした。
日本の敗戦によって、この日、長く続いた戦争がようやく終わったのでした。
〜あんぱん第12週終わり〜
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