あんぱん第11週「軍隊は大きらい、だけど」あらすじ内容を吹き出し形式で!

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あんぱん第11週のあらすじ
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やなせたかし夫婦をモデルにした2025年の朝ドラ「あんぱん」。

この記事では、第11週「軍隊は大きらい、だけど」のあらすじ(ネタバレあり)をお届けします。

第11週の内容をざっくり言うと

  • 昭和17年、康太とともに小倉連隊に転属した嵩は、古兵たちから目をつけられて辛い毎日を過ごしていた
  • そんな中、半年前に入隊していた辛島健太郎(高橋文哉)と再会する
  • 上等兵の八木(妻夫木聡)からの助言のおかげで、嵩は中隊長から目をかけてもらい、幹部候補生試験を受験することにする
  • 試験当日、嵩はうっかり寝坊してしまい試験に遅れるが、「乙種幹部候補生」に昇格する
  • 昭和19年、海軍に入隊した弟・千尋から手紙が届き、久しぶりに再会する
  • 自ら海軍に志願した千尋が理解できず、嵩は激しく問い詰めるが、「5日後に駆逐艦で出撃する」という千尋を止めることができない
  • 千尋は、伯父の書斎にあった父・清の手帳を「お守りにして欲しい」と嵩に手渡す
  • 千尋は、「生きて帰ってきたら、のぶさんに気持ちを伝える」と長年温めてきた恋心を嵩に打ち明ける
  • その後、嵩の部隊も出動することになり、中国の奥地へと向かう
  • 無事に駐屯地に着くと、小学校の同級生・岩男と再会する

それでは、あんぱん第11週の詳しい内容を見ていきましょう!

目次

あんぱん第11週「軍隊は大きらい、だけど」あらすじ

厳しい生活の始まり

昭和17年。

福岡・小倉の連隊に転属した嵩は、康太と共に荷解きをしていました。

嵩がカバンから「井伏鱒二の詩集」を取り出すと、古兵の馬場が顔をしかめます。

馬場(古兵)

詩集?マス・・・・・・ジ?
こんなものは、ここでは必要ない!

馬場は詩集を破り、足で踏みつけました。

馬場(古兵)

土佐もんはたるんどる。気をつけ!

すると、馬場の鉄拳が飛んできました。

そこへ、八木上等兵が現れます。

八木信之介(小倉連隊)

・・・これはお前のものか?
娑婆っ気が抜けとらんようだな

馬場(古兵)

八木上等兵殿は、お前の戦友となられる。
ご挨拶せんか!

柳井嵩

柳井二等兵であります!
よろしくお願いいたします!

八木信之介(小倉連隊)

・・・お前、「軍人勅諭」は?

八木信之介(小倉連隊)

覚えてないのか

柳井嵩

はい、すみません・・・・

八木は嵩に「軍人勅諭」を尋ね、覚えていないことを確認すると『歩兵須知』を手渡しました。

八木信之介(小倉連隊)

明日までに暗記しておけ

古兵たちが一斉に道を空け、八木は静かに部屋を去っていきました。

馬の世話係

何をするにもドン臭い嵩。

古兵たちから目をつけられ、毎日怒鳴られて叩かれていました。

就寝前、嵩は必死で「歩兵須知」を暗記しようとしましたが、なかなか頭に入りません。

隣の八木は、優雅に歌集を読んでいます。

翌朝、馬の世話係に任命された嵩は、厩舎で初年兵たちと話をしました。

柳井嵩

加畑、目黒・・・
八木上等兵のことなんだけど、なんであの人より上の階級の人たちまで、あんなにペコペコしてるの?

柳井嵩

みんなに怖がられてるけど、何者なんだろう?

加畑(新兵)

俺もよく分からんとって。
まだ来てそげん経っとらんけん

柳井嵩

あの人・・・殴らないんだよ

康太(幼馴染)

強そうやき、今にコテンパンに殴られるやろ!

話しながら掃除をしていると、突然、馬場が顔を出します。

馬場(古兵)

こら、私語は慎め!さっさとやらんか!

古兵からのいじめ

その夕方、嵩たち初年兵4人組は馬場に呼び出されました。

馬場は神妙な面持ちで切り出します。

馬場(古兵)

甲田の戦闘帽が、誰かに盗まれた。
今からお前らの荷物を点検する!

馬場は嵩の寝台から帽子を取り出しました。

馬場(古兵)

・・・ここは誰の寝台だ?

柳井嵩

じ、自分であります

馬場(古兵)

お前が盗んだのか!

柳井嵩

ち、違います!

馬場(古兵)

悪くも、天皇陛下から貸与いただいた戦闘帽であるぞ!

嵩は馬場と甲田に殴られ、床に倒れ込みました。

そこへ八木が現れます。

八木信之介(小倉連隊)

何事だ

馬場(古兵)

こいつが戦闘帽を盗んで隠しておりました!

八木は、倒れている嵩の胸ぐらをつかんで引き起こします。

八木信之介(小倉連隊)

・・・・面を貸せ

八木は嵩を兵舎の裏まで連れて行きました。

八木信之介(小倉連隊)

お前は・・・
戦地まで持たないかもしれんな

柳井嵩

どういう意味でありますか?

八木信之介(小倉連隊)

絶望して便所か裏庭で首をつる、ってことだ。
・・・「軍人勅諭」は覚えたか?

柳井嵩

懸命に覚えておりますが、何しろ長くて・・・

八木信之介(小倉連隊)

朝までに暗記しとけ

柳井嵩

は、はい!

八木は嵩に靴磨きを命じて去りました。

健太郎との再会

嵩が地面にひざをついて靴磨きをしていると、軍服姿の人影が現れました。

辛島健太郎(同級生)

こら!
そこの新兵、たるんどるぞ!立て!

柳井嵩

申し訳ありませんっ!

嵩が立ち上がると、目の前にいたのは健太郎でした。

柳井嵩

健ちゃん!?

辛島健太郎(同級生)

貴様、何だと?

健太郎は眉ひとつ動かさず、嵩を睨みつけました。

柳井嵩

・・・・・・ど、どうしたんだよ・・・
健ちゃんでしょ?
なんとか言ってくれよ

嵩は図案科の歌を小声で口ずさみました。

柳井嵩

ワッサワッサ・・・・・・

健太郎もこらえきれず一緒に歌い出し、かつての人懐っこい表情を見せました。

辛島健太郎(同級生)

・・・なんで柳井くんがここにおるとよ?

柳井嵩

高知で入隊して、すぐ小倉に転属になったんだ

辛島健太郎(同級生)

俺は半年前ん入隊して、今んところは炊事班やりよぉとって

辛島健太郎(同級生)

炊事班はやばかよー。
毎日三時んたたき起こされて・・・

柳井嵩

俺は毎日なぐられてばっかりだよ・・・

辛島健太郎(同級生)

軍隊は頑張れば、それなりによかとこばい。

辛島健太郎(同級生)

おっと、いかん。
戻らんと俺もブン殴られるけんね、また会お

健太郎との思いがけない再会で、心が折れそうだった嵩は少し救われた気がしました。

中隊長の視察

3ヶ月後、嵩は班長の当番に任命されました。

八木の口添えといううわさで、古兵たちは首を傾げました。

ある日、中隊長が内務班の廊下に現れました。

中隊長

硬くならんでよい。

中隊長は馬場に「軍人勅諭」を尋ねましたが、馬場は答えに詰まりました。

中隊長

なんだ、古参兵がいかんなあ。
おい新兵、お前はどうだ?

柳井嵩

はい!
ひとつ、軍人は忠節を盡すを本分とすべし!
ひとつ、軍人は礼儀を正しくすべし!
ひとつ、軍人は武勇を尚ぶべし!
ひとつ、軍人は義を重んずべし!
ひとつ、軍人は質素を旨とすべし!であります!

中隊長

うむ、大いによろしい!
なんだ、俺よりうまいじゃないか

数日後、嵩は下士官室に呼び出されました。

神野班長

柳井、中隊長殿から「幹部候補生試験を受けさせろ」と格別のご指名があった

柳井嵩

・・・・は、はい!

神野班長

目黒も受験を希望しておる

神野は『陸軍幹部候補生試験問題集』を二人に差し出しました。

神野班長

問題集だ。
二人ともしっかり勉強せい!
中隊の名誉に関わるからな

柳井嵩

はい!ありがとうございます

嵩は考える余地も与えられぬまま、試験を受けることになりました。

八木からのプレッシャー

それ以降、嵩と目黒は当番などを免除され、勉強に集中する日々となりました。

試験を三日後に控えた夜。

嵩は八木からプレッシャーをかけられます。

八木信之介(小倉連隊)

中隊長の期待に応えられなかったら、どうなると思う?

柳井嵩

えっ・・・

八木信之介(小倉連隊)

これで落ちたら、古兵たちから何倍も仕返しされるな。

柳井嵩

はぁ・・・
覚えることが多くて、時間がいくらあっても足りません

八木信之介(小倉連隊)

引くも地獄だ。
お前には受かるしか道はないな

試験前夜

試験の前日。

嵩は厩舎の不寝番を申し出て、徹夜で勉強することにしました。

馬の傍らで猛勉強していると、健太郎があんぱんを差し入れてくれました。

辛島健太郎(同級生)

酒保(売店)で買ってきたばい。差し入れ

柳井嵩

ありがとう。あんぱんなんて久しぶりだ

辛島健太郎(同級生)

厩舎は寒かっちゃけん、風邪ひかんとよ。
馬ん抱きついて寝よったら、ぬくかばい

柳井嵩

今日は寝てられないから・・・

辛島健太郎(同級生)

そげんやったね。
明日の試験、頑張りんしゃい!

健太郎が去った後、嵩は馬にそっと触れました。

柳井嵩

ほんとだ。
お前、あったかいなぁ・・・

馬の隣で、嵩はうとうとし始めました。

夜が明け、朝の見回りに来た士官が厩舎を覗くと、嵩は馬のそばで眠っていました。

陸軍

おい!不寝番のくせに、ぐっすり眠りこけるとは!
今日の試験は受けられんぞ

柳井嵩

うああああーーー!

嵩は転びそうになりながら厩舎を飛び出しました。

試験の結果

3週間後、中隊長室で結果発表がありました。

中隊長

目黒二等兵、甲種幹部候補生、合格!

目黒(新兵)

ありがとうございます!一層精進いたします!

目黒が退室すると、嵩に厳しい視線が注がれました。

中隊長

柳井!
こともあろうに不寝番が眠り込むとは何事だ!
戦場ならどうする?

柳井嵩

も、申し訳ありません!!

中隊長

・・・だが、試験はなかなかよくできていた。
神野班長が「どうしても受けさせてほしい」と申し出るので、今回だけ特別に試験が受けられるように計らってやったのだ。

中隊長

本来なら甲種合格だが・・・
居眠りをしていたのが祟ったな。

中隊長

まあ、成績優秀につき乙幹(乙種幹部候補生)に繰り下げということで、連隊長殿のご了承もいただいた。
おめでとう。

柳井嵩

・・・ありがとうございます!

嵩は敬礼し、信じられない気持ちで中隊長室をあとにしました。

その日の午後。

嵩が下士官室で軍服をたたんでいると、神野が戻ってきました。

柳井嵩

ありがとうございました!
温情をかけていただき・・・・

神野班長

・・・俺ではない

神野班長

俺も頼まれたんだ。
変わり者から・・・

嵩に試験を受けさせるように口添えしてくれた神野でしたが、背後には違う人物がいたようです。

「変わり者」と聞いて、嵩の頭に八木の顔が浮かびました。

千尋との再会

昭和19年夏。

入隊して2年が経ち、嵩は伍長の階級に昇進していました。

ある日、嵩に一通の手紙が届きます。

差出人の欄には『佐世保局イ壹九ウ八三海軍少尉 柳井千尋』と書かれていました。

柳井嵩

か、海軍少尉!?

手紙には『今度の土曜日、小倉で会おう』と書かれていました。

約束の土曜日がやってきて、兄弟は久しぶりの再会を果たします。

白い軍服姿の千尋を見て、嵩は息を呑みました。

柳井嵩

えらく仰々しい肩章だなあ。
お前、本当に海軍さんになったのか・・・・

千尋(たかしの弟)

見てのとおりだ。
兄貴は伍長殿か

旅館の座敷で、二人は向かい合って座ります。

柳井嵩

・・・千尋、どういうことだ?
俺はてっきり、京都帝国大学で勉強に励んでるとばかり・・・

千尋(たかしの弟)

卒業が半年繰り上げになって、海軍予備学生に志願した。

千尋(たかしの弟)

遅かれ早かれ兵隊に取られる。
それならばと・・・

柳井嵩

・・・なんで!
なんで志願なんかしたんだよ!?

千尋の言葉に、嵩は怒りを抑えきれませんでした。

千尋(たかしの弟)

・・・兄貴もあの場にいれば分かるよ。
みんなが行くのに、一人だけ行かないわけにはいかなかった。

兄弟の衝突

柳井嵩

千尋は俺より頭がいいのに、大バカ者だ!
わざと落ちればよかったじゃないか!

千尋(たかしの弟)

航空隊には落ちたよ。
柳井家はみんな目が悪いだろ?
その代わり、耳がすごくよくてな・・・
どんな小さな音でも聞き分けられるんだ。

千尋(たかしの弟)

任務につくのは駆逐艦の一番底だ。
そこで、敵の潜水艦のスクリュー音を探知して爆雷を投下する

柳井嵩

お前の口からそんな話聞きたくなかったよ・・・
弱い人たちの声を聞いて救うために、法科に行ったんだろ!?

柳井嵩

伯父さんがいつも言ってたじゃないか。
何のために生まれて、何をして生きるのか?って。
敵をやっつけるためじゃないだろ!

千尋(たかしの弟)

もうやめてくれ・・・
兄貴は、わしにどうせーって言うがな!?

千尋は声を震わせながら、嵩を見つめました。

千尋(たかしの弟)

わし・・・
五日後に、佐世保から駆逐艦に乗るがや

柳井嵩

五日後!?

千尋(たかしの弟)

行き先は、南方や。
もう後戻りはできん・・・

柳井嵩

千尋・・・

千尋は内ポケットから古びた革の手帳を取り出しました。

千尋(たかしの弟)

渡したい物がある。
わしらの父さん、新聞記者の仕事で大陸へ行った時、つけちょった日誌や

柳井嵩

えっ、父さんが?

千尋(たかしの弟)

伯父さんの机の引き出しから出てきたがや。
兄貴が持っちょったほうがえいき。
お守りに

柳井嵩

お守りなら、千尋が持ってたほうが・・・

千尋(たかしの弟)

わしにはこれがあるき

千尋はボロボロの清の写真を取り出しました。

柳井嵩

お前、こんな写真持ってたのか!

千尋(たかしの弟)

伯父さんの家にもらわれた時から、ずっと大切に持っちょった

柳井嵩

知らなかった・・・
これ、ありがとう。大切にするよ

千尋はにっこりと微笑んで、写真をポケットにしまいました。

愛する人のために

食事の後、二人はなかなか別れを切り出せずにいました。

柳井嵩

・・・・・なあ、千尋。
最後に思いっきりバカなことしないか?

千尋(たかしの弟)

・・・わしは、もういっぺん、シーソーに乗りたい

柳井嵩

あのシーソーか・・・
のぶちゃんもいて、楽しかったな

千尋(たかしの弟)

・・・もう一度、のぶさんに会いたいねや

柳井嵩

千尋、お前、もしかして・・・

千尋(たかしの弟)

ああ、そうや。
わしはのぶさんが好きや。

千尋(たかしの弟)

兄貴の嫁さんになるがやったら、諦めもついたのに・・・

千尋は、嵩の胸ぐらをつかみ声を張り上げました。

千尋(たかしの弟)

何グズグズしよったがな?
贈り物のハンドバッグも渡せんで、思いも伝えられんで、おめおめと、のぶさんを他の男に取られて・・・

千尋(たかしの弟)

のぶさんの言うとおり、兄貴はたっすいがーのアホじゃ!

柳井嵩

ごめん・・・何にも言えねえ

千尋(たかしの弟)

わしは生きて帰れたら、もう誰にも遠慮はせん。
今度こそ、のぶさんをつかまえる

柳井嵩

な、何言ってるんだ!?
彼女はもう人妻だぞ?

千尋(たかしの弟)

構わん

千尋(たかしの弟)

何のために生まれて、何をして生きるがか、分からんまま終わるらあて・・・そんながは嫌じゃ。

千尋(たかしの弟)

この戦争がなかったら、わしは法学の道を究めて、腹をすかせた子どもらあや、虐げられた女性らあを救いたかった。
この戦争がなかったら・・・
兄貴ともっと何べんも、酒を飲んで語り合いたかった。

千尋(たかしの弟)

この戦争さえなかったら、国のためにしぬより・・・
わしは愛する人のために生きたい

柳井嵩

千尋、生きて帰ってこい!
必ず生きて帰れ!

柳井嵩

・・・またシーソー乗ろうな

嵩はこぼれ落ちる涙を止められないまま、必死に笑顔を作ります。

千尋(たかしの弟)

兄貴・・・お元気で

千尋も涙を拭い、まっすぐに嵩を見つめました。

夕日の中で、ギッコンバッタンと軋むシーソーの音が、耳の奥で聞こえたような気がしました。

八木と神野の関係

嵩は小倉連隊の兵営に戻り、力なく下士官室に入りました。

八木信之介(小倉連隊)

・・・弟には会えたのか

柳井嵩

は?はぁ・・・
弟は海軍士官になっておりました・・・

魂の抜けたような嵩を見て、八木は状況を察知します。

八木信之介(小倉連隊)

出撃前の面会だったのか

柳井嵩

そのとおりであります・・・

二人のやりとりを見ていた神野が八木に話しかけます。

神野班長

お前は本当にこの男をよく分かっとるなぁ

柳井嵩

・・・あの、失礼ながら、班長殿と上等兵はどういう?

神野班長

元々、同年兵だ

柳井嵩

あ・・・そうでありましたか

嵩は、初めて謎が解けたような気がしました。

八木は試験を拒絶するので階級が上がらないだけで、立場こそ上等兵でしたが、入隊したのはかなり前。

八木が皆から一目置かれているのは、そういう理由だったのです。

出動前夜

千尋が出撃してから1ヶ月後。

いよいよ嵩の部隊も出動の時が来ました。

出発を翌日に控えた夜、班員たちは豪快に酒を飲んでいます。

神野班長

いよいよ明日は出陣だ!もっとたらふく飲め!

八木は隅のほうで物思いに耽り、黙って席を立つと部屋をあとにしました。

嵩が八木のあとをつけていくと、八木は兵舎の裏で星を眺めていました。

柳井嵩

・・・ここにおられたんですか

八木信之介(小倉連隊)

バカ騒ぎは、性に合わん

嵩はスケッチブックと鉛筆を出して絵を描き始めました。

柳井嵩

明日をも知れぬ命なのに、みんなよく酒飲んで騒いでいられますね

八木信之介(小倉連隊)

だから騒いでるんだ。
そうでもしないと、不安に押しつぶされてしまうから・・・
お前はどうなんだ?

柳井嵩

こうして絵を描いていると・・・心が落ち着きます

柳井嵩

自分のような者が軍隊でへこたれずにやってこられたのは、戦友殿のおかげであります

八木信之介(小倉連隊)

・・・井伏鱒二の詩集のせいだ

柳井嵩

戦友殿も好きなんですか

八木信之介(小倉連隊)

ああ・・・あの時から、同じ匂いを感じた。
ただ、俺はお前の戦友として当たり前のことをした、それだけだ

柳井嵩

・・・これまでのお礼です。
受け取ってください

嵩は描き上げた八木の横顔の絵を渡しました。

八木信之介(小倉連隊)

柳井・・・お前は俺と違って弱い。
戦場では、その伍長の階級なんか、お前を守ってはくれん。

柳井嵩

教えてください。
自分のような者が生き残るためには、どうしたら・・・

八木信之介(小倉連隊)

卑怯者になることだ。
仲間がやられても、仇を取ろうなんて思うな。

八木の助言に嵩は途方に暮れ、満天の星を見上げました。

気づけば、隣にいた八木はいなくなっていましたが、スケッチは持ち去ってくれているようでした。

「朝が来るのが怖い」と感じたのは、生まれて初めてのことでした。

偶然の再会

嵩たちの小倉連隊は船で運ばれ、上陸後に向かったのは中国福建省の奥地でした。

兵営近くの市場で、嵩と康太が辺りを見回していると、懐かしい土佐弁が聞こえてきました。

岩男(のぶの同級生)

たまるかー!
たっすいがの嵩やいか!

振り返ると、駆け寄ってきたのは小学校の同級生・岩男でした。

柳井嵩

岩男くん!?

岩男(のぶの同級生)

お前は、康太やいか!
こんな所で、おまんらに会えるらあて!

岩男は嵩の階級章に気づき、慌てて気をつけの姿勢をしました。

岩男(のぶの同級生)

嵩、ドノは長殿でありますか?
自分は兵長の分際で失礼しました!

岩男(のぶの同級生)

康太、おまんは一等兵か!
ほんなら遠慮は要らん

岩男は嬉々として康太の頭を抱え込みました。

柳井嵩

岩男くんはいつここに?

岩男(のぶの同級生)

自分たちは四国師団所属の工兵連隊より、この駐屯地に一年前から分遣され、野戦任務についていたのであります!

柳井嵩

・・・それにしても懐かしいね

康太(幼馴染)

子どもの頃、嵩ドノから奪うて食べた弁当は、ほんまにうまかったねや

岩男(のぶの同級生)

しかし、ハチキンおのぶに見つかって、下駄で殴られたのであります!
弁当はうまかったけんど、痛かったのであります!

柳井嵩

あはは!

明日の命も分からない異国の地で、子ども時代に戻ったように3人は声を上げて笑い合いました。

〜あんぱん第11週おわり〜

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