小泉八雲夫婦をモデルにした朝ドラ「ばけばけ」。
第8週では、ヘブンが持っている「小さな人形」に注目が集まっています。
日本の藁人形に似ていますが・・・
これはいったい何なのでしょうか?
実は、アメリカの民間信仰の1つである「ブードゥー教」と関連が深い人形なのです。
そこで今回は、
- 【ばけばけ】ヘブンの藁人形「ブードゥー人形」とは?
- 小泉八雲と「ブードゥー教」の史実とは?
について詳しく解説していきます!
※本記事は、朝ドラ「ばけばけ」の今後の展開を含む可能性がありますのでご注意ください。
【ばけばけ】ヘブンの藁人形「ブードゥー人形」とは?

ヘブンが持っている藁人形は「ブードゥー人形」と呼ばれるもので、「祈り」や「呪い」などの目的のために使われる信仰具(お守りのようなもの)とされています。
朝ドラ「ばけばけ」の第8週の終盤。
あらすじを見ると、ヘブンがトキに「ブードゥー人形」をプレゼントするシーンが描かれる予定です。
ヘブンが持っていた藁人形らしきものは「ブードゥー人形」ということが判明します!
「ブードゥー人形」とは、アメリカのニューオリンズなどで生まれた民間信仰「ブードゥー教」で使われている人形。
欧米では、映画などの影響で「呪い」や「黒魔術」のような怪しいイメージが強い信仰とされています。
実際には、どのようなものなのでしょうか?
詳しく見ていきましょう!
アフリカにルーツ
「ブードゥー教」のルーツは「西アフリカ」にあります。
アフリカからアメリカ大陸に連れてこられた黒人たちが、祖先から信じてきた神や精霊への祈りを持ち続けたことが始まりでした。
実際には「ハイチ」や「ニューオーリンズ」の一部の地域で独自の発展をしてきた民間信仰です。
そこに「カトリック」の要素もミックスされ、地域ごとに異なる「ブードゥー文化」が生まれました。
神様は「ロア」
ブードゥー教の神様は「ロア(Loa/Lwa)」です。
精霊的なイメージに近く、「恋愛成就」「家族円満」「病気治癒」など、目的に応じてそれぞれ役割を持ったロアが存在すると考えられています。
ブードゥー教では、歌やダンス、太鼓などの儀式を通じてロアにアプローチします。
つまり、ブードゥー教の役割とは、
- ロア(精霊)と繋がること
- 祈りや踊り・音楽で癒しを得ること
- 病気や悩みに対する民間療法
など。
「ご祈願」「ヒーリング」「占い」などに近いイメージですね。
「ブードゥー(Voo dooまたはVodou)」は、黒人差別などにより虐げられた人々の心の支えになったり、コミュニティの絆やアイデンティティを保つための大切な文化でした。
ブードゥー人形の役割
そんな独自の文化(信仰)から生まれた「ブードゥー人形」。
一般的な用途としては、以下のものがあります。
- 治癒・祈願
病気回復や問題解決のために本人のエネルギーを象徴する人形を使い、ロアに祈りを届ける - 個人のお守り
仕事・恋愛・健康などを良い方向へ進めるだめの護符としての扱い
藁人形のような「呪いをかける」というイメージが持たれがちですが、本来は、
人生を良い方向へ導くためのお祈りの道具
なのです。
人形の作り方は謎
そんな「ブードゥー人形」の素材や作り方は、地域によって異なるようです。
具体的な「作り方」については悪用を避けるために細部は公開されていないのが実情です。
ここでは、一般的に使われる素材や色の持つ意味などについてご紹介します。
素材
主に使われる人形の素材は、以下のようなものがあります。
- 木の枝、藁、布切れ
- 持ち主の髪・爪・衣服の一部(エネルギーの象徴)
- ハーブ(バジル、セージ、パチョリなど)
- 赤・黒・白の糸やリボン
ヘブンが持っていた人形は「藁(ワラ)」の素材と「布切れ」に見えましたね!
人形の色が持つ意味
また、素材に使われる色にはそれぞれ象徴があります。(※諸説あり)
- 赤:情熱、生命
- 黒:保護、退ける力
- 白:癒し、平和
つまり、保護を受けたいときは「黒」、癒しを受けたいときは「白」など、目的に応じた使い方がされています。
このように、ブードゥー教では、人形に願いや祈りを「結びつける」という考えが強いです。
つまり、藁人形のような呪いの道具というよりも、「自分と霊存在を繋ぐもの(媒介物)」なのですね。
現在では、ネット販売などでさまざまなブードゥー人形が流通しています。
本物かどうかはさておき、「見たことがある」という人も多いのではないでしょうか?
映画による怖いイメージ
「ブードゥー教」と聞くと、「怪しい」「怖い」というイメージを持つ人が少なくありません。
例えば、
- ブードゥー教の司祭が悪者として登場
- ブードゥー人形が呪いの道具になっている(針を刺すなど)
- ゾンビや闇の儀式
など。
これからは、ハリウッド映画などで描かれたイメージが定着してしまったものと言われています。
特に、1988年公開の映画「チャイルド・プレイ」が有名です。
魂が宿ってしまった人形が悪さをするホラー映画ですが、このチャッキーの魂の移し替えが「ブードゥー呪術」として描かれました。
この映画の影響により、
ブードゥー=黒魔術
というイメージが一気に広まってしまったようです。
実際には、ブードゥー教は、ロアと繋がって祖先を敬ったり、個人の幸せや保護を願うもの。
しかし、アメリカでは黒人社会への偏見や差別、野蛮などイメージが根強く、このような極端な描写に繋がってしまったと言われています。
また、1900年代初頭、ニューオーリンズの観光業で「怪しい黒人魔術」としてブードゥーを見世物化させたことも偏見の始まりでした。
当時は、新聞なども一緒になって宣伝したため、それがハリウッドの物語の素材になってしまったという見方もあります。
小泉八雲と「ブードゥー教」の史実とは?

小泉八雲は、ブードゥー教が根強いニューオーリンズで記者をしていた時代、その信仰を熱心に研究し、様々な作品やエッセイに残しました。
小泉八雲は、ニューオーリンズ在住(1877年〜1887年頃)に、黒人社会・クレオール文化(混血の人々)を熱心に取材しました。
ブードゥーに触れた作品
小泉八雲(ラフカディオハーン)がブードゥー教に触れた作品は、以下のようなものがあります。
- 『New Orleans: The City of the Heart』(ニューオーリンズ関連エッセイ)
- 『Gombo Zhèbes』(民俗・方言・伝承集)
- 短編『La Femme de Gibbs(ギブスンの女)』
- 『New Orleans Nights』
これらの作品では、「人形」や「儀式」などについても、偏見の目を持つことなく、ありのままに詳しく記されています。
これらを執筆するにあたり、小泉八雲は「ブードゥー教の女王」と呼ばれた「マリー・ラヴォー(1801年〜1881年)」とも面会したようです。
小泉八雲は、ブードゥーを決して「怖い黒魔術」などと描写せず、
- 民族の歴史
- 土地の記憶
- 人々の祈りの形
などを深く観察して記録しました。
むしろ黒人社会の信仰を「豊かな文化」として描き、見えないものの存在や民間伝承、人々の暮らしに宿る物語に魅了されたようです。
さらには、クレオール文化のレシピ本まで出版。
朝ドラ「ばけばけ」のラフカディオ・ハーン(小泉八雲)は、アメリカ民俗学史では、食の民俗学研究の最初の人物として位置づけられています。ニューオーリンズでレストランを開業したのですが、共同出資者に資金を持ち逃げされ、再起のために、クレオール料理のレシピ本を出版したのです。 pic.twitter.com/KU8V1ZzqJj
— 現代民俗学 関西学院大学 島村恭則研究室 (@kg_vernacular) May 26, 2025
クレール文化を含む「ブードゥー研究」の原点が、後の日本での「怪談文学」の基礎になったと言えるでしょう。
ばけばけの描写はあり得る
「ばけばけ」のように、後の妻になる小泉セツさんに人形をプレゼントしたという史実はありません。
しかし、ヘブンが「ブードゥー人形を持っている」というのは自然な流れであり、小泉八雲らしさが出ているエピソードと言えます。
それだけ熱心に研究していたとすれば、人形をお守りとして持っていた可能性も十分あり得ます。
実は、ヘブン役を演じるトミーバストウさんも、ニューオーリンズを訪れ、ブードゥー教への理解を深めています!
小泉八雲のおもかげ#ばけばけ #トミー・バストウ が巡る
— ドクター橋爪│プロデューサー@ばけばけ (@drhashizume) November 2, 2025
アイルランドとニューオーリンズ
11/3(月) 9:15~ 総合 43分版
11/22(月) 22:30~ BS 59分版
BS版では総合版に加え、松江の旅も!
海外ロケも行いトミーの役作りに密着。
ドラマチームで自ら作ったドキュメンタリー番組です! pic.twitter.com/I8xlctccdE
筆者も視聴しましたが、この番組を見ると「やっぱりブードゥー教って怪しそう・・・」と思わずにはいられませんでした。
一方で、この怪しい雰囲気に感化され、ワクワクしながら取材していたのかな・・・?と、当時の小泉八雲に想いをはせることもできました。
こちらの番組は、2025年11月22日(土)にもBSで再放送されます。
小泉八雲とブードゥーの関係を知りたい方は、ぜひご覧になってみてください!
- 【番組名】小泉八雲のおもかげ「ばけばけトミー・バストウが巡るアイルランドとニューオーリンズ」
- 【放送日】2025年11月22日(土)午後10:30
- 【チャンネル】BS
- 連続テレビ小説「ばけばけ」でヘブン役を演じるトミー・バストウ。徹底した役作りでドラマに臨むトミーが、ヘブンのモデルとなった小泉八雲の足跡を追った旅に密着。
ちなみに、小泉八雲のクレオール料理のレシピ本は、日本語に訳されており、実際に手に取ることができます。
こちらも併せてご覧いただくと、日本に来る前の小泉八雲について詳しく知ることができるでしょう。
ブードゥー人形と小泉八雲(ヘブン)に関するQ&A
小泉八雲は実際にブードゥー人形を持っていたのですか?
調べた限りでは、人形を持っていたという史実は確認できていません。
しかし、ご紹介したようにブードゥー教に関する取材や研究をしていたため、持っていたとしてもおかしくはありません。
ブードゥー人形には本当に祈願や呪いの効果があるのですか?
科学的な効果などは実証されてはいません。
日本におけるお守りや護符のように、強い効果を信じ、期待している人もいます。
ブードゥー人形の儀式で針を指すのはどういう意味があるのですか?
願いを叶えたい場合には、針を刺す瞬間に強い願いを集中させて人形に「魂」や「念」を注入する意味があります。
呪いの手段としては、日本における藁人形のように「痛みの転送」として人形に針を指すこともあります。
【関連記事】





コメント