アンパンマンの作者として有名なやなせたかしさん。
朝ドラ「あんぱん」でも描かれているように、詩人としての顔もありました。
あんぱん第22週「愛のカタチ」では、「てのひらのうえのかなしみ」という代表作が登場。
”手のひらの上に、淡い悲しみがこぼれる・・・”
大切な人を失った蘭子や佳保の心に染み渡った詩です。
今回は、そんな「てのひらのうえのかなしみ」について詳しくご紹介していきます!
やなせたかしの詩「てのひらのうえのかなしみ」の全文は?

朝ドラ「あんぱん」にも登場した「てのひらのうえのかなしみ」の詩の全文がこちらです。
てのひらのうえに
やなせたかし「てのひらのうえのかなしみ」
あわいかなしみがこぼれる
にぎりしめれば
うすあおく
てのひらににじむ
とおいおもいで
まばたいてすぎた
なつかしい愛の日
ゆびさきに
いまものこる
しあわせなおもいで
てのひらのうえに
あわいかなしみがこぼれる
きまぐれに
てのひらにきえる
ふるいおもいで
てのひらのうえに
あわいかなしみがこぼれる
みつめていれば
ひそやかに
てのひらにうかぶ
愛のまぼろし
まばたいてすぎた
つかのまのよろこび
このむねにいまものこる
なつかしいおもかげ
てのひらのうえに
あわいかなしみがこぼれる
にぎりしめても
さびしげに
てのひらにきえる
愛の思い出
「てのひらのうえのかなしみ」は、
- 愛にあふれた過去の思い出
- それに対する淡い悲しみ
などがじんわりと伝わってくる詩です。
手のひらからこぼれ落ちてゆく「水」「光」「砂」のようなイメージで表現されているように感じます。
詩全体を通して、同じフレーズが繰り返されているのも特徴です。
これにより、心の揺れ動きが繊細に、大切に描かれています。
朝ドラ「あんぱん」では、
- 蘭子:亡くなった豪との思い出
- 佳保:亡くなった父との思い出
がこの詩に重ねられていました。
あなたも、遠い思い出の中に残る”大好きだった誰か”を思い出さずにはいられない詩ではないでしょうか?
思い出はつかもうとしてもつかめない、でも、決して消えることはない・・・。
そのような心の内側が「こぼれる」「にじむ」「うかぶ」「きえる」と言葉を変えて表現されていますね。
「てのひらのうえのかなしみ」は、女声合唱曲として曲もつけられています。
佳保の好きな詩は本当は「てのひらのうえのかなしみ」ではない?

あんぱんに登場した中里佳保の実在モデルは、やなせさんの「人間なんてさみしいね」という詩に感動したというエピソードが残っています。
「あんぱん」に登場した小学生の女の子・中里佳保は、脚本家の中園ミホさん自身がモデルだと言われています。
以下の記事でも書いているように、父親を失って悲しみに暮れていた中園ミホさん自身が、当時救われた詩とは「人間なんてさみしいね」だったのです。

この詩のタイトルは、あんぱんの第1週「人間なんてさみしいね」にも引用されていました。
中園ミホさんにとって思い入れのある詩であり、やなせたかしさんの原点だと理解されていることが伝わってきます。
「人間なんてさみしいね」の詩の全文はこちらです。
心と心がふれあって
なんにもいわずにわかること
ただそれだけのよろこびが
人生至上の幸福さ
たったひとりで生まれてきて
たったひとりで・・・・・
人間なんてさびしいねやなせたかし「人間なんてさみしいね」
人間なんておかしいね
(※一部は都合により伏せさせていただいています)
小学生の頃、「愛する歌」第2集に収録されたこの詩に触れた中園ミホさん。
「幸せそうに見える人も、みんな同じなんだな」「父もそうだったんだな」と気持ちの整理をつけることができたんだとか。
「あんぱん」では、実話とは違う詩(てのひらのうえのかなしみ)が引用された理由はなぜなのでしょうか?
そこには、「蘭子」の存在があります。
豪ちゃんとの思い出の中で、揺れ動く蘭子をしっかり描くため(視聴者に納得させるため)に、「佳保と好きな詩が同じ」という設定にしたのではないかと考えます。
また、ここで「人間なんてさみしいね」が出てくれば、第1週のタイトルと被ってしまうことにもなり、やなせさんの詩の広がりが生まれません。
少しでも多くやなせたかしさんの詩を紹介するために、エピソードが練られているのでしょう。
以下が、中園ミホさんのインタビューの内容(一部抜粋)です。
佳保と蘭子が好きな詩は「愛する歌」第一集に収録されている「てのひらのうえのかなしみ」にアレンジした。
「劇中の年代だと、まだ第一集しか出版されていないので、そこは史実に沿って。第一集も暗唱できるぐらいですが、あらためて読み返してみて、大切な人を亡くした2人には一番響く詩だと思って選びました。永瀬さんと河合さんが交互に詩を読むシーンは、最高に素晴らしかったです」
https://www.sponichi.co.jp/entertainment/news/2025/08/28/kiji/20250828s00041000006000c.html?page=1
メイコの詩「えくぼの歌」の全文についてはこちらの記事でご紹介しています。

やなせたかしの詩集「愛する歌」についてはこちらの記事で詳しくご紹介しています。



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